体重移動は何のためなのか

フォアハンドを教わるときにこの記事のように右利きなら右から左への体重移動を教えられることが多いと思うが、この体重移動は何のために行われるのだろうか。

卓球の基本のキ 指導者が心がけるべきフォア打ちを覚えさせるためのポイント | 卓球メディア|Rallys(ラリーズhttps://rallys.online/forplayers/howto/kihonofkihon/

数十年前のペンのオールフォアのようなスタイルが全盛だった頃には左足が前に出るようなスタンスが基本で、後ろから前のスイングをするために右から左への体重移動を重視することは理解できる。しかし今は基本的にエンドラインと平行のオープンスタンスが基本であり、体幹を回して回転運動で打球する。このような打法の場合右から左への体重移動を強制されることは本質的な意味を見失うことになる。

 

打球速度を上げるために必要なのは回転運動の速さであってそのために体重移動は必要ない。基本的なフォアハンド打法では、バックスイング時に右股関節が曲がり骨盤が右を向き、右股関節が伸びつつ骨盤が前に向く回転運動を利用して打球する。このときに、回転軸を頭を中心とした中心軸にするのか、左足軸にするのか、右足軸にするのかという観点からの結果として体重移動が起きるに過ぎない。

 

例えば威力を出したい場合、回転半径を大きくしたほうが強く打てるので右足軸よりも左足軸で打球したほうが回転半径が大きくなり強打できるだろう。これは一見右から左への体重移動に見えるだろうがそれが目的ではない。どの軸で打球するかという観点からの結果である。

 

また動く方向によっても打球軸は変わる。フォア側に動く場合、飛びつきや一歩動などで動くが、この場合は右足軸で打球することになる。

 

「体重を乗せる」ことも全く不要である。卓球で必要なのはラケット速度であってボールの力に対抗するための力や相手を殴り倒すような力は不要。体重を乗せるという概念は不要であり、必要なのは体幹の回転からの運動エネルギーをラケットに伝えることである。その運動エネルギーは右股関節屈曲からの伸展から生じ、右足左足中心のどの軸で回るかを威力や移動の観点から決定して打球するのであって体重を乗せるという意識の必要性は無いだろう。

 

右から左へ体重移動を意識することの弊害もある。初心者が右から左への体重移動を意識するとかならず頭が大きくぶれ、体幹の回転が意識されることもない。この記事では「ボールを呼び込むときには右足に体重を乗せ、打つときに左足へ移動させる。右、左、右、左の繰り返しだ。もちろん激しく上体が揺れ動くほどの体重移動ではなく、ほんの少し体が揺れる程度だ」などと書いているが全く本質的ではない。必要なのは右股関節屈曲からの伸展であって屈曲時に右足に体重を移す必要性もない。身体の正面に来るボールに対して右足に体重を載せてフォアハンドバックスイングする人はいないだろう。右股関節屈曲に体重を右足に乗せることは必要ではない。

 

例外はある。例えば回り込んだときや、高いボールを打球するときなど左足前のスタンスになるときだ。この場合、左足に体重移動することがボールの進行方向への力になるので体重移動に意味はあるだろう。

遠心力を使って打球する

よく、遠心力を使って打球すると言われます。

遠心力は、フォアハンドのスイングで言えば、体の外側に向かう力のことであり、打球方向の力ではありません。

つまり、遠心力を使って打球するというのは正確には間違いです。

ラケットが外に飛ばされそうに遠心力を感じるスイング速度だと速い打球が打てるだけの話です。

フォアハンド

腕はあまり後ろに引かないようにして、正面に向いている状態から右肩を引きテイクバックします。

そこからスイングを開始し、身体が相手のバック側を向いているときに斜め45度前後でインパクトし、右肩を前に出しつつフォロースルーします。

ラケットを戻すときに脇が開いたままテイクバックするのではなく、脇を軽く閉めるように戻し、またテイクバックに入ります。

数メートル前の台に入れる必要があるから、インパクトはスイングの前の方で前に飛ばさないようになどと表現する人もいますが、これは明らかに間違いです。前に飛ばすために良い用具を使っているのですから、前へのベクトルが最も大きいポイントでインパクトすべきです。

順横、逆横サーブ

順横回転サーブ、逆横回転サーブという用語があります。卓球をしている人でもこの言葉を知らない人は何のことか全くわからないと思います。

順横回転サーブは、いわゆるフォアの振り子サーブです。右側に曲がっていくようなサーブのことを順横回転サーブといいます。

逆横回転サーブは左に曲がっていくサーブのことで、巻き込みサーブや逆振り子サーブのことを指します。逆振り子サーブはYGサーブのことです。

順横回転、逆横回転、YG(ヤングジェネレーション)サーブなどの用語は、合理的な命名方法ではないため使うべきではないと思います。動作を表現した命名でもなく、統一性もなく、時事的なネーミングになっているためそれぞれ「右回転」、「左回転」、「逆振り子」の用語を使うべきでしょう。

打球ポイント

打球ポイントとは身体のどの位置で打球するかというポイントです。ボールのバウンドのどこで打つかという打球点とは意識的に用語を使い分けています。

フォアハンドの場合、打球ポイントは身体の斜め45度あたりに設定します。身体の真横では打球しません。なぜなら身体の後ろに腕を引くことはほとんど無いため身体の真横で打球すると腕の力を十分に利用できないためです。真横が0度、正面が90度とすると30度~45度あたりで打球するのが良いと思います。

打球ポイントでは脇をある程度開いて打球します。打球時に脇が閉まっていると肩を使えませんし回転半径が小さくなってしまいスイング速度が出ません。

姿勢

卓球の姿勢はパワーポジションが重要です。

パワーポジションとは、力を出しやすく動きやすい姿勢と言われ、股関節、膝関節、足関節の3つの関節を適度に曲げ、軽くお尻を後ろに引き、上体が軽く前傾姿勢になってるような姿勢です。股関節を折るという表現がよく使われますが、お尻を軽く後ろに引いて、鼠径部を上体と100度前後あたりに角度をつけることが重要です。お尻を後ろに引かずに各関節を曲げただけだと上体が立ったままになり鼠径部に角度がつきません。

スタンスは肩幅より1.5倍~2倍程度広く取るのがいいと思います。狭すぎると離れたボールを取るときに足を大きく動かす必要があり非効率です。違和感なく打てて動ける範囲で広めに取るのがいいと思います。

バック側に立った場合身体が相手のバック側に向いて少し左足前になるように立ちます。フォア側に立った場合は平行スタンスでいいでしょう。

かかと重心だと跳ねるような動きをする卓球では動きづらいので拇指球重心が良いでしょう。実際は足裏全体に体重を乗せるのと拇指球重心を繰り替えすように構えているはずです。伝統空手のぴょんぴょん跳ねる基本姿勢に近いと思います。

台からの距離は深いボールが来てもバックハンドで打てる距離を基準にします。前陣がエンドラインから1メートル、中陣は2メートル、後陣は3メートルなどと定義されていますが、上達するとエンドラインから1メートル以内でラリーしてる選手はほとんどいません。

 

ラケットの持ち方(シェークハンド)

ラケットの持ち方は重要です。持ち方によってプレイするポジションや得意技術などが決まり、卓球のスタイルが決まるからです。

ラケットの持ち方にはフォアハンドグリップ、バックハンドグリップ、ニュートラルグリップなどがあります。

ニュートラルグリップ

ニュートラルグリップはテニスで言うコンチネンタルグリップに近く、ラケットを台に対して垂直にし、まっすぐ上から握手をするように握ります。癖がなく基本とされる持ち方です。

 

フォアハンドグリップ

フォアハンドグリップはテニスで言うイースタングリップに近く、ニュートラルグリップからラケットのフォア面を少し下に向けて上から握手をするように握ります。

 フォアハンドグリップはフォア側のラケット面が開きやすく、フォアハンドを体の前で打つことができフォアハンドの打球点を早くすることが可能です。右シェークが苦手な左横上サーブをフォアで処理することも難しくありません。一方でバックハンドの面を出しづらくバック技術がしづらい傾向があります。体の前で打ちやすいため下回転に対するフォアドライブも卓球台に近づかなくても早い打点で打つことができます。

 

バックハンドグリップ

バックハンドグリップは、ニュートラルグリップからバック面を少し下に向けて上から握手をするように握ります。

フォアハンドグリップとは逆にバックハンドグリップはバック面を開きやすく角度を自由に出せます。一方でフォア面は開きづらく前で打ちづらいため打球点が遅くなりがちです。右シェークが苦手な左横上サーブをフォアで処理することが難しいように思います。バック面が自由に出せるためチキータもバックハンドグリップの方がやりやすく、現在ではバックハンドグリップの選手が多いように思います。手が小さいこどももバックハンドがしやすいためバックハンドグリップになりがちです。フォア面が開きづらく体の前で打ちづらいため、下回転をフォアドライブするときは卓球台に近づかないと早い打点で打つことが難しいです。

 

他にはラケットを深く握る浅く握ることやバック時に親指を立てるなど言われることもありますが、このへんはやりやすいように持てばいいと思います。たいして違いはありません。何より重要なのは、あらゆる角度が出せるようにラケットを握ることです。技術によって多少のグリップ変更をすることもありますが基本的には同じ持ち方であらゆる技術ができるように握ります。